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表−1「かいれい」のヒ要口

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1. 「かいれい」建造の目的
地球の表面は、複数のプレートに分割されており、このプレート同士がぶつかり合い、一方が他方の下へもぐり込むと海溝を造る。日本の周囲には、水深6,OOOmを超える海溝が発達し、そこではプレートの沈み込みが起っていると考えられている。そして、太平洋プレートやフィリピン海プレートの沈み込み運動等によって地殻に歪みが蓄積され歪みが解放されるときに大地震が発生し、隆側に火山も形成されるため、海溝周辺の地質学的・地球物理学的研究は極めて重要とされてきた。
海洋科学技術センターでは、従来から潜水調査船「しんかい2000」や「しんかい6500」を利用して深海底の状況を観測し、サンプリングするなど、水深6,500mまでの様々な研究を進めてきた。そして、海溝域を含む更なる大深度海域での本格的な総合研究が望れてきた。
そのために、当センターでは、平成6年度に世界の最深部まで潜航調査が可能な無人探査機「かいこう」を完成させた。しかし、「かいこう」は、当初「しんかい6500」の母船「よこすか」に搭載されていたため、自由な運航期間が設定できず、運用効率の更なる向上のため専用母船の建造が望まれていた。
また、平成6年度には、大深度海域における深海底表層や断層の地形、地質構造を明らかにするために、マルチチャンネル反射法探査システムが購入されたが、このシステムの有効な利用のためにも深海域の調査研究船の建造が要望されていた。
2. 「かいれい」の研究設備の概要
(1)無人探査機「かいこう」の運航「かいれい」では、まず、無人探査機「かいこう」の運航が円滑に行えるように12,OOOmものケーブルをハンドリングする装置や、着水・揚収システムが装備される。
また、11,000mの大深度で目標地点に無人探査機「かいこう」を正確に誘導するために、海中の位置を高い精度で出すことのできる音響測位装置が装備される。この装置では、「かいれい」から海底に設置したトランスポンダ(音波応答器)と無人探査機「かいこう」に搭載したレスポンダ(音波呼び出し器)を使用し、「かいれい」で無人探査機「かいこう」の非常に精度の良い位置出しを行うことができる。
また、地球上の船の絶対位置を出すGPS衛星航法システムには、従来のGPSに比べて測位精度を1桁以上向上させる(精度1m以内)ためディファレンシャル機能を装備する。
「かいこう」の円滑な運用には、1万m以上のケーブルを繰り出した後、微妙な操船作業を行うことが必要不可欠である。そのために、2基のメインプロペラやバウスラスタの推力を最適化して配分し、舵の動きを含めて、微妙な操船を行うことができる最新のジョイスティック操縦機能が装備される。
(2)海底下深部の地層構造の探査
海底下深部の地層構造を知る方法として、もっとも有力な物理探査法の1つであるマルチチャンネル反射法探査システムを装備する。このシステムでは、図−2に示したように、エアガンと呼ばれる音源(震源)から高圧空気により海中で大きな振動(地震波)を発生させる。そして、海底下数十kmもの深部の地層の変化により反射してくる振動を長大な受波装置(ストリーマケーブル)で受信(受振)する。このストリーマケーブルは、3km以上の長さを持つ油が浸されたビニールホースであり、中には120個ものハイドロフォン(水中マイク)とデジタル変換器等が組み込まれている。受振された信号は、ディジタル的に記録される。そして、最終的には計算機で信号処理を行い、結果を詳しく解析することにより、。上部マントルまでの地下の深部構造を詳細に把握することができる。
(3)その他の研究設備の概要
?大型海洋観測船「みらい」と同様に、最深部の11,000mまでの海底地形を迅速に探査することのできるマルチナロービーム音響測深装置(シービーム)を装備する。シービームは、深海調査の基本となる海底地形図を迅速に作成する装置であり、図−3のように水深の2〜6倍もの広い範囲を1回の航走で計測することが可能である。

 

 

 

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